「非正規と女性の貧困から何を考え行動するのか」2019年秋季講演会レポート
2019年11月8日(金)、恒例の秋季講演会を開催しました。
今回は、野依智子さん(福岡女子大学教授)を招聘し、「非正規と女性の貧困から何を考え行動するのか」と題して講演をしていただきました。
講演の中で、まず非正規雇用の背景には、ジェンダー(社会的に作られた性別役割分担)があり、とくに女性の非正規雇用の割合が高い原因として、1960年代以降の日本の法律や制度が大きく作用してきたことを解説していただきました。
世界的にもジェンダーによる性別格差は大きな社会問題であり、日本でも1999年に男女共同参画基本法が施行されるなど、性別による経済・社会的格差の解消に向けて取り組みが進められています。
しかしながら、2018年に発表されたジェンダーギャップ指数をみると、149か国中日本は110位で、とくに経済分野(117位)、政治分野(125位)での男女格差が依然として大きく、また別の指数でも、日本全体は経済的に豊かであるのに、男女間の大きな経済的格差が浮き彫りになっています。
日本において性別格差が根強く残っている理由は、日本の雇用政策に歴史的・制度的な問題があり、つまり制度的に女性の非正規労働者が生み出された結果ではないかと示唆されました。
さらに問題を掘り下げるため、「非正規職シングル女性の社会的支援に向けたニーズ調査」(2015年)の結果から、非正規で働く未婚の子どものいない女性の実態についてお話いただきました。
調査から、就職氷河期における女性新卒の約7割が非正規で働き始めざるを得なかったこと、子どもがいないために公的支援が受けられない層であること、約6割が非正規での働き方を望んでないこと、未婚で子どもがいないという社会的・心理的圧力も感じていることなど、非正規で働く子なしシングル女性の置かれた厳しい実情が明らかにされました。
また、契約・嘱託・派遣・パート・アルバイトなど、職場の中で非正規雇用形態の細分化と重層化が進んでいる状況や、正規と非正規の職務領域は不明瞭なのに、賃金や処遇については歴然たる格差がある問題なども、グループインタビューからうかがい知ることができました。
この調査結果からも、非正規雇用の貧困問題は制度的に作られた構造的問題だということがわかります。
アンケートに協力した彼女たちの求める主な支援は、最低賃金を上げること、公的支援が受けられるよう社会保障制度の拡充、同じ立場の人たちの交流の場だったということです。
講演に引き続いて、しんぐるまざず・ふぉーらむ・福岡の大戸理事長と中学校教員の方に、それぞれの立場から非正規の現場からの声ということで、非正規で働く女性やシングルマザーの現状についてご報告いただきました。
参加者からも質問や活発な意見交換もあり、非正規の問題を深く考え、それぞれが次のアクションにつなげるヒントの得られる講演会になったのではないかと思います。
講演会の詳細については、後日「非正規雇用フォーラム・福岡ニュース」で報告いたします。
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